明け方の眠り姫
「ナツキ、美術館から戻ったらみんなでシャルロットのカフェに行こうよ。一杯おごるよ」

 セルジュが、私の目の下を軽く撫で、ウインクを投げる。メイクで念入りに隠したつもりでいたが、眠れない夜の証が浮き出ていたのだろう。

 今夜はこれで、一人にならずにすむ。安堵した私は、そっと胸を撫でおろした。


 最初にシャルロットのバーに行った夜に、セルジュには私の職業を教えていた。その仕事を休んで、この街に来た理由も。


「外はまだ雪が残っているよ。寒いから気を付けて、ナツキ」

「ありがとうセルジュ。それじゃあ、また夜に」

 仕事に向かうという彼に別れを告げ、私は一人、パリの街へと繰り出した。

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