今の私は一週間前のあなた




「…ねぇ、乃々」




私は後ろを振り返り
そこに居るはずの乃々に声をかけた


しかし、返事は返って来ずその姿は見当たらない



嫌な汗が背中をじわりと濡らす


「…乃々…?」

呼んでも返答はない


「…隠れてないで…」
教室の真ん中でぐるぐると回って探す


丁度後ろを向いた時に
パチン

電気が消えた

幸い昼間だから光は入ってくる
しかし、さっきまで照っていたはずの太陽は厚い雲で隠されていて暗い



教室にポツンと1人で佇む



「…遊んでないで、出てきてよ」

それでも姿は見えなくて
唐突に消えてしまった



急な一人ぼっちが怖くなって
足の力が抜けてその場に座り込む

「…っ」
修也がいなくなってからずっとひとりだったのに

乃々が来てからひとりの時間がなくなった。



修也が生きていた頃みたいに騒がしい日々だった。

急に静まり返った教室内で



「…藍乃!」
息の切れた声で名前を呼ばれた気がした

聞き慣れた、それでいて懐かしい声


「…修也!?」
声がした方を振り返っても誰もいない
しんと静まり返った教室に私以外誰もいない



立ち上がって声のした方へ歩く

「…修也…?」



教卓に近づけば自然と視線は黒板に吸い込まれていった

ズキン
頭が痛くなる
急な痛みに目をぎゅっとつぶった

『側にいてやるから』
あの、優しい声が頭の中を蹂躙していく


「…修也…」



ゆっくりと目を開くと同時に

中学三年の夏の記憶が蘇ってきた
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