この熱は消えぬまま
 和馬が目が覚める前に、ここを去らなければ。

 真由は彼が夢の中の出来事だったと思ってもいいと言っていたけれど、彼女のために何かをしたい。

 見渡すと近くの机に白紙のメモ用紙があった。

『再び目が覚める前に帰ります。真由との約束を忘れずに、これからあなたの人生を送ってく
れることを願っています。 美由』

 そう書き記した。

 和馬がこれを読めば、きっと現実のことだったと気付いてくれるだろう。

 テーブルに置きっぱなしの鍵を借りて、玄関の鍵を掛けた。

 ポストへと鍵を落とす。


 手には和馬を抱きしめた時の感触がまだ残っている。

 真由はもういないのに、心の中に彼女の思いが、熱が残っている。

 きっと、この熱は当分の間、このまま消えないで残っているのだろう。

               -FIN-
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