この熱は消えぬまま
「おなか空いちゃった。食べよう」

 いただきまーすと真由が丁寧に両手を合わせ、そのあと鶏肉のから揚げにかぶりついた。

「これおいしいよ。和馬くんも食べたら?」

「よーし、俺も食うぞ」



 夢のような時間。

 彼女が隣にいる。

 それがすごく嬉しかった。

「どうしたの?」

 真由が俺の顔を覗き込んでいた。

「ううん。なんでもないよ」

「ウソ。だって、和馬くんって考えていることが顔に出るんだもの。そういうところはいまだに変わらないね」

「そうか」

「うん。よかった変わらないままでいてくれて」

 思わず俺は彼女を抱きしめていた。

「く、苦しいよ。もうちょっと腕を緩めてよ」

「ご、ごめん」

 両腕に入れていた力を緩めた。

 その腕を真由がすり抜けていく。

「ケーキも食べようよ。今日はクリスマスイブなんだから」



 気がつくと、俺はベッドの布団の中にいた。

 あのあともかなり飲んだと思う。

< 3 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop