リンカーンはアメリカンコーヒーを三杯飲む。





女はバケツを裏返し、その上に足を組んで座って、何やら咥えて、煙を吐いた。



多分あれは、電子タバコだ。



「おい、金子! お前のお姫様がお目覚めだ!」



女の声で、分厚い扉の奥から、さっきの男が姿を見せた。



「おいおい、紗栄子。俺は、目が覚めたらそいつを風呂場へ案内してやれと言ったはずだけど?」



女は、男を「金子」と呼んだ。そして、「金子」は、女を「紗栄子」と呼んだ。



「なんかこいつの顔見てると、イライラすんだよ。まるで、昔の自分見てるみたいでよお。」



紗栄子と呼ばれた女が私に近づいて、煙を吐きかけてきた。目に染みて、思わず顔を背けた。



「確かにね。あの頃の紗栄子そっくりだ。」




< 63 / 109 >

この作品をシェア

pagetop