リンカーンはアメリカンコーヒーを三杯飲む。
女はバケツを裏返し、その上に足を組んで座って、何やら咥えて、煙を吐いた。
多分あれは、電子タバコだ。
「おい、金子! お前のお姫様がお目覚めだ!」
女の声で、分厚い扉の奥から、さっきの男が姿を見せた。
「おいおい、紗栄子。俺は、目が覚めたらそいつを風呂場へ案内してやれと言ったはずだけど?」
女は、男を「金子」と呼んだ。そして、「金子」は、女を「紗栄子」と呼んだ。
「なんかこいつの顔見てると、イライラすんだよ。まるで、昔の自分見てるみたいでよお。」
紗栄子と呼ばれた女が私に近づいて、煙を吐きかけてきた。目に染みて、思わず顔を背けた。
「確かにね。あの頃の紗栄子そっくりだ。」