桃色吐息
美容院を出ると、自然とエイジ君は私の手をつないでくれていた。

なんだか酷く心配してくれているのが伝わってくる、彼の手がとても暖かくて、外はまだまだ暑いのにそれが心地よかった。


ラフォーレ前の交差点で立ち止まると、信号が青に変わる。

そこからなだらかな坂道になっている。

私がふとエイジ君の顔をのぞくと、思いっきり笑い返してくれた。




「よし走るぞ!」

そういったとたん、私はエイジ君と手をつなぎながら、思いっきりその坂道を走っていた。


自然と大きな声が出て、キャー!とかワー!とか叫んでいた。

もうだいぶ夜も遅い時間、人はそんなに多くはなかったけれど、周りの人たちはあきれたように私たちを見ているような気がした。

それでもなんだか気にならなかった。それが気持ちよくて、ずっと走っていたいと思った。



駅前の鉄橋までたどり着くと、やっと私たちは安心して手を離す。


「なに、いきなりどうしたのよ。」

私は自然と笑顔がこぼれていた。

「なんかさ、いきなり走りたくなった。意味なんかねーよ。」








そういったエイジ君の言葉に、ああこの人はちゃんとわかっているんだと思った。





彼が私の短くなった髪を優しくなでてくれる。








そして気付いてしまったんだ、





私はこの人のことが、大好きになっていたんだって。
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