桃色吐息
ベットの中で寝巻きでうとうとしていたところに携帯が鳴った。今度はメールじゃなくて電話の方。

とっさにすぐ出てしまったけど、まだちょっと怒りが治まらない。


「もしもし、遅くなってごめんな」

エイジ君の優しい声が聞こえる・・・

それだけでひどく安心して、一瞬眠くなってしまったけれども、遅いよってちょっと拗ねたふりをして返事をした。


「そんなことぐらいで泣くなよ」

エイジ君は笑っているように思えた。
私のちっぽけな不安なんてすべて笑い飛ばしてしまうかのように。

なんだかその雰囲気が、ああ大丈夫だって思った。なんだかわからないけれども、大丈夫だって。


「もう笑ってるでしょう!」

そう言い返すと、エイジ君も楽しそうに話し続けてくれる。


「なあ、明日どうしようか? 早く会いたいな・・」


そんな風に言ってくるから、またお腹の奥がきゅんとなって困った。



明日はゆっくり会えるんだなあ・・・ またしてくれないかなぁなんて思ったら、凄く恥ずかしくなって言葉にならなくなってしまった。


「どうした?」


エイジ君の声が、やたら耳に絡みつくようで、あの日の彼の吐息を思い出す。


「なんでもない、ねえどこに行こうか?」



私はどこでもいいよ・・・



「じゃあ水族館行くか。」


彼は、この前の何気ない雑談ですらちゃんと覚えていてくれて、そう誘ってくれた。

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