桃色吐息
「桃は、泣いたり怒ったり忙しいな。」

エイジ君はまた前みたいに、優しく涙を拭いてくれるから、またキスしたいなあって思ってしまう。


そんな瞬間、そっと唇に彼の唇が重なった。



それは、この前とは違って、ほんとに触れるだけのもので、さっきダメだって言ったクセにってちょっと笑みがこぼれてしまう。

「全部好きだけど、やっぱ笑ってるほうがいいな。」



もうこの人は、何でそういうことをいつもさらっとやってのけるんだろうって思う。

私は思わず、彼におもいっきり抱きついてしまった。



「ちょっ、おい、さっき言ったろ・・・」


「ハグはダメって言ってないもん。」


そういって、エイジ君も私をきつく抱きしめてくれると、丁度観覧車がてっぺんに上ったところだった。



「なあ、もうおねがいだから、あんなエロいキスしてくんなよ。」

もっとしたくなるからって笑って言うから、私もわかったって笑い返した。




ゆっくりと観覧車が下りていく。

やっと2人で周りの景色を眺めながら、ランチはなんにしようかなって話していた。



「この前の桃のパスタ、うまかったなあ・・・」

しみじみとそう言ってくれるので、またいつでも作ってあげるよって答えた。



ああ、やっぱりお弁当は作ってくるべきだったなあと、ちょっと後悔しながら、結局駅前のバーガーショップでお昼を済ませてしまった。




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