桃色吐息
次の日からは、お弁当の量をもうちょっと少なめにして作るようにした。

毎日の栄養バランスとか、食べやすさとか、色々かぶらないようにとか、考えてるだけで楽しくて、毎日うちで料理を考えてるだけで楽しい。

好きな人のために作る料理って、こんなに楽しいんだなって思う。

そういえば、ビトにお菓子を作っていたときも、そのときだけは気がまぎれて楽しかったっけなあ・・・


エイジ君のバイトの日には、同じくらいの時間にお弁当をもって行くと、同じ公園で二人でランチをする。


「なんかいいな、毎日弁当って、新婚かよ。」

そういって岩淵さんや、他のバイトの人に冷やかされたりなんかして。




2人で空を見上げながら、おにぎりを食べる。


そういえば、うちのお母さんは毎朝おにぎりなんだよなあ・・・
お父さんが、毎日同じものじゃないとダメな人だから。

具は、そのときの仕事内容によって変えてるみたいだけど。


今日の具は、夏らしく梅干にしてみた。


「そうえば、蓮にライブ誘われたんだけど、エイジ君もきいてる?」

蓮が毎年行っている野音のスカイベントのチケットが、二枚あまってるとか何とか言ってた。

「そういえばそんなこといってたなあ・・・適当にいこっかなとか言っちゃった気がする。」


友達のバンドが出ることになったから、その子らの分のチケットが必要なくなったとか言ってたっけ。


「野音なら、酒飲めるしなあ・・・」

「もう、お酒はやめなよ、大人になるまで。」

「わかったよ。」

そう言いながら、代わりにアイスコーヒーを飲んでいる。


「そういえば、最近飲まなくても平気になってきたな。」


うちでもそんなに飲まないとか言っていて、ちょっと安心する。

悪ぶっていても、なんだかんだ真面目なんだよエイジ君は。



「野音って、ちゃんと席もあるし、後ろの方でも結構見えるし、危なくはないんでしょう?」

私は一緒に行けるのかなって、結構期待していた。


「でも昔、パンクのライブで人が死んでるけどな・・・」

私たちが生まれるずっと前の事だって、そんな風にいってくれたけど、
一瞬ぞくっとした。

あんなにみんな、楽しそうにしてるっぽいのにな、ライヴ映像とか見てると。



「なあ桃、絶対安全なんてとこねーんだよ。
あの伝説のライブ以来さ、警備も厳しくなったし、そんな悲惨なこと無くなったらしいけどさ、パンクスはそういうの承知でライヴきてんの。」

エイジ君は真剣にそう話してくれる。


「だから、ライヴ中は俺から離れんなよ。」
そんな風に、力強くいってくれる。



そうか、エイジ君がいれば大丈夫だきっと・・・


彼がそばに居るだけで、きっと色々と守られていたんだなって実感する。

一人でここに来るようなって、わかったんだ。


表参道からここまで来るときにさえ、いまだに色々声かけれれるんだもの。
エイジ君が心配するから、あんまりいわないようにしてるけど。ちゃんと断れるし。
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