君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
それは…体育館裏。

翼くんと初めて出会った場所で

背中に輝く翼を見て、

目を奪われて、

心も奪われた、わたしにとって

大切な場所。

わたしの中の恋する心が動き出した

場所だと思う。

その時はまだ、人を好きになるって

事が分からないわたしだったけど、

今なら分かる気がする。

出会った瞬間から、わたしは

翼くんに恋をしてたって…

偶然にも同じクラスになって

再会したわたし達は、

クラス委員を一緒にやる事になった。

バスケ部のマネージャーに誘われて

わたしの過去が明るみに出て

翼くんに告白されて、断って。

楽しいことも悲しいことも

泣いたことも…

本当に沢山あった。

それでも、今こうして

毎日を大好きなみんなと

愛する人…翼くんがいて

わたしがどれだけ幸せを貰ったか

分からないくらい。

それをこれから少しずつ返せるように

なりたい。

こうして翼くんの傍に居ることが

出来てるのは、翼くんが手を伸ばし

続けてくれたからなんだよ。

じゃなかったら、きっとわたしは今

こんな風に笑えてなかったと思うの。

ずっと逃げてばかりで、

手を伸ばして貰ってばかりの

わたしが、ここに翼くんを

連れてきてしたかったこと…

それは、わたしから翼くんに

手を伸ばしたかったから。

好きな気持ちはお互いに

分かってるけど、それでも

改めて言わせて欲しい。

わたしから告白して、またここから

始めたい。

「翼くん、あのね…

話したいことがあって…

聞いてくれる?」

体育館裏を懐かしむように見つめる

翼くんが頷いた。

「話ってなに?」

改めて考えると、好きな人に

好きって言うのってすごく

勇気がいる。

心臓がドキドキして、

断られたらどうしようって悩んで。

それでも、勇気を出して

気持ちを込めて伝える。

簡単なようですごく難しいんだって

今なら分かる。

「えーっと、あのね…

わたし…桐生くんを初めてここで

見た時から…好きでした!

付き合って下さい!」

ガバッと頭を下げると、

頭上から聞こえてきたのは、

「は?何言ってんの?

俺達、もう付き合ってんじゃん」

と、呆れてる翼くんの声。

ふふふ、そうだね。

確かにわたし達は付き合ってるし、

未来の約束もしてる。

だけど、それは翼くんが

手を伸ばしてくれたからで、

わたしはそれに乗っかる形で

わたしから告白はしてないの。

ちゃんと、自分の口から

付き合って下さいって言えてない。

頭を上げて、わたしは言った。

「桐生くんのことが好きです。

付き合って下さい。

返事聞かせて貰えますか?」

少し離れた場所にいた翼くんが

一歩ずつわたしに近づいてくる。

そして、わたしに向かって…

「俺で良ければ」と優しい眼差しで

返事してくれた。

良かった…

今更だけど、断られたら

どうしようかと思っちゃった。

世の女の子達は、こうして

告白してるんだと思うと、

尊敬する。

「これからよろしくお願いします!」

笑顔で翼くんの胸に飛び込んだ。

見上げると、笑って

「こちらこそよろしくな」と

抱き締めてくれた。

「で、何で今更告白なんだ?」

真剣な表情の翼くんに…

「今こうして翼くんといれるのは

翼くんが諦めずに手を伸ばして

くれたからで、わたしは何の

努力もしてないって思ったから。

だから、初めて出会った

この場所でわたしから、告白して

出会った瞬間から好きだったこと…

伝えたかったの。

告白って勇気がいる事なんだなって

改めて思った。

こんなドキドキを翼くんに

何度もさせてたんだと思うと、

わたしは駄目だなあって思ったから」

そう言って、ギュッと抱きついて

翼くんの心臓に手を当てて…

もうひとつ告白した。

「翼くんの背中に輝く翼に

わたしは恋に落ちました」と。

すると、クスッと笑って

「俺も初めて出会った瞬間に

流羽の笑顔に恋に落ちました」と

言ってくれた。

夕日が沈んで、真っ暗な冬の夜の

体育館裏。

翼くんと手を繋いで笑い合った。

明日からまた、

新しい毎日が始まる。

これから先、何があっても

この手は離さない。

だから翼くんも、わたしを

離さないでね?

ずっと一緒にいようね。

約束だよ?

寄り添うわたし達を祝福するように

夜空に星が輝いていた。











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