君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
うちの地区は強豪揃いで

簡単には勝たせて貰えないと

思っていたけど、

なんと!!

あっという間に地区予選の

決勝にまで駒を進める事が

出来た。

そして、決勝戦の相手は…

強豪校の中でも1番の強さを

持つ星崎高校。

それでも、みんななら…

このチームなら絶対に勝てる!

相模先輩の号令で集まったみんなは

円陣を組んだ。

「「絶対勝つぞ!!」」

そして、最後の試合が始まった。

第1、第2、第3クウォーターは

接戦で点の取り合いが続き、

同点のまま迎えた第4クウォーター。

残り10分で決着がつくんだ!

汗だくで頑張るみんなに

ベンチから声援を送り続けて…

残り2分。

星崎が2点リードを保ったまま、

入れては取られ、取り返しを

繰り返す、目の離せないゲーム展開。

タイムボードに目を向けると、

残り30秒しかない!

疲れが見え始めていた部員が

隙を突かれて、ボールを取られ

相手にゴールを決められた。

点差は3点。

残り15秒が表示された時だった…

相手のボールを見事にカットした

翼くんが3ポイントエリアから

ボールを放った。

綺麗な放物線を描いたボールは

パシュッと音を立てて

ゴールに吸い込まれた!

「やった!!でも…

このままじゃ同点で延長戦に

なっちゃう…

みんな、もうヘトヘトで余力なんて

残ってないはずだよ…

だから、あともう1点決めないと!」

お願い!神様!

どうか、みんなを勝利に導いて!

残り5秒…

だめなの!?

思わず目を瞑った時だった…

「翼ー!行けー!!」

日向くんの声が響いて、

目を開けると、相手のゴール下から

日向くんがロングパスを出した。

その先には…翼くん!!

翼くんがボールをキャッチした

タイミングで、わたしは

声の限り大声で叫んだ!

「翼くんっ!!飛んでー!!」

わたしの声が聞こえたかは

分からないけど、翼くんは

大きく、ゴール目掛けて飛んだ!

そして、ブザーが鳴ると同時に

ダンクした。

あ…翼が見える…

やっぱり翼くんはすごい!

初めて見た時と変わらない。

綺麗にキラキラ輝く翼が見えるよ。

空を飛ぶ鳥みたい…

そこで試合終了のホイッスルが

吹かれ、審判が手を振り下ろした。

あれが、ブザービート…

「璃子!!やった!!

みんなが勝ったよ!!」

「うん!勝ったね!!」

わたしと璃子、そしてベンチに

控えていたみんなでハイタッチを

した。

試合は1点差でうちの高校が

勝利した。

整列するみんなの顔が

逞しく見えて、わたしは溢れる

涙を止められなかった。

ベンチに戻って来たみんなに

「おめでとう!!」と

チームみんなで囲む。

興奮覚めやらねままのみんなは、

バスに乗っても、ずっと笑ってて

その笑顔を見るだけで、わたしも

すごく嬉しい…

毎日厳しい練習にも耐えて、

苦手な事にも取り組んで、

そして、掴み取った勝利だもん!

嬉しいに決まってるよね。

学校に着いても、試合で疲れてる

はずなのにテンションは上がる一方で

心配になる。

興奮し過ぎて、逆にアドレナリンが

出てるのかも…

でも、今日くらいはいいのかな?

次の日の放課後、体育館へ行くと

昨日の元気は何処へやらって感じで

みんなの顔に疲れが出てる…

地区ナンバー1のチームと接戦だった

んだから、体力の消耗も

きっとすごいはずだよね。

大丈夫かなとは思ってたけど、

念の為に持ってきて良かった…

「皆さん、お疲れ様です!

疲労回復に効くハチミツレモンと

えーっと、それからスポーツ飲料…

それから、湿布薬持ってきましたから

良かったらどうぞ!

アイシング用のスプレーも!」

それを見たみんなが押し寄せてきて

取り合いを始めてしまって、

小さなわたしは、揉みくちゃに!!

「はあー…潰されちゃうかと

思ったー」

みんなから離れて、見守っていると

翼くんが駆け寄ってきた。

「流羽はほんとに気が利くよな。

でも、ほんとは俺だけに

して欲しいけど…」

みんなに視線を送る翼くんの顔が

どことなく不機嫌…というか

拗ねて見えるのは気のせい?

わたし、自意識過剰かな?

でも、みんなとは別に

翼くんにだけしたいこと

あるんだけど…

「翼くん…あのね?

今日、部活後時間ある?」

みんなから視線を外して、

わたしを見る翼くんは

口元に笑みを浮かべて頷いた。

「いいよ」

「ありがとう!」

そして部活後、わたしは翼くんを

連れてきた。

わたし達の思い出の場所に…







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