君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
ドキンッ…ドキンッ…

「はい、なんでしょうか?」

自覚した途端に話しかけられるなんて

想定外過ぎるっ!!

「ちょっと話せるか?」

桐生くんの真剣な表情に、

璃子や聖奈ちゃんが気を利かせて

先に帰るねーと言い、

去ろうとしている。

えぇ!?

待ってー!!とわたしは目だけで

助けを求めるも、2人は

ニヤニヤしながら手を振って

本当に去っていった…

そんなぁ…わたしを1人にしないでー!

わたしは伸ばしかけた手を

ダランと落として、

心の中で溜め息をつく。

璃子はいつもわたしに

接触してくる男の子には必ず、

すごく警戒するのに…

なんで桐生くんだといいの?

わたしは首を傾げた。

下駄箱に残されたわたしは

去っていく2人の背中を見送り、

桐生くんに視線を戻した。

「…えっと、あの…話って何かな?」

まさか今朝のこと?

桐生くんの真剣な表情からは

何も読み取れない。

ポーカーフェイスって

やつなんだろうか?

でも、目が合った時は笑ってたよね?

桐生くんという人が分からない…

うーんと頭を悩ませていると、

「あのさ、バスケ部のマネージャー。

やってくんないか?」

えっ?マネージャー?

思いもよらない言葉に

わたしは一瞬

ポカンとしてしまった。

なん、で?

「どうして…わたしなの?

バスケットのルールも

全然分からないし、要領悪いから

役には立たないと思う」

わたしは義足だから…

それはさすがに言えないけど…

義足のことを抜きにしても

わたしが出来ることはきっと少ない。

昔から要領悪いしね。

「春瀬に見てて欲しいから、

役に立つとか立たないとか関係ない」

えっ…

見てて欲しい?

わたしに??

それは…どういう意味?

さっき恋を自覚したばかりの

恋愛初心者のわたしには、

桐生くんの言葉を

理解するのは難しすぎる。

急展開すぎて、なにがなんだか

分からない…

「見たり応援したりは出来るけど…

それじゃ駄目かな?」

首を傾げると…

「俺の傍にいて欲しいってこと。

部活でもそれ以外でも」

んんっ!?

傍にいて欲しいって…

っていうか!

部活でもそれ以外でもって…

わたしの頭は完全に停止した。

ただ黙って桐生くんを

見つめる事しか出来ないでいた。

「とりあえず考えといて」

じゃあ、と言って

桐生くんは去っていった…

わたしの頭の中は

ハテナマークで大混雑。

小さくなっていく

桐生くんの背中に問いかける…

「なんで、わたしなの?」

わたしはドキドキする胸を押さえて

ただじっと桐生くんが

見えなくなるまで、見つめ続けた…

初めての体験ばかりをした

濃い1日だった…



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