君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
その時…

かすかに義足の部分が痛んで

ヒリヒリしていることに気付いた。

汗で擦れたのかもと足を撫でていると、

それに気づいた璃子が駆け寄り

「もしかして…足、痛むの?」

小声で尋ねてきた。

黙って頷く。

「とりあえず外まで頑張れる?」

璃子は落ち着いた表情で言った。

わたしはまた黙って頷いた。

わたし達のやり取りを見ていた

桐生くんと日向くんが

声をかけてきた。

「どうした?」

「なんかあったのー?」

そんな2人に璃子は平然と答えた。

「あたしら、汗だくだから

着替えて帰るわ!

風邪引きたくないし。お先っ!!」

「ごめんね…お先に…」

わたしは痛みをこらえて

笑顔で手を振った。

そして、体育館をあとにして

更衣室に担ぎ込んでくれる璃子。

わたしは椅子に座り、

痛みに耐える。

こんな痛み久しぶりかもしれない…

こんなに動いたのは小学生以来

かも。

それにしても痛いな…

わたしの手を握りながら

璃子はホームに電話してくれた。

「あ!もしもし!愛子さん?

そう、璃子だけど。

今すぐ高校来れる?

流羽が足痛むみたいで動けないの」

うん、じゃあ校門の前で!と言って

電話を切った璃子。

わたしの義足を外してタオルで

包み、近くにあったビニール袋に

突っ込んだ。

そして、誰もいないことを確認して

荷物とわたしを抱えて校門まで

歩く璃子。

その時、校門に

愛子さんの姿が見えた。

愛子さんと璃子は

わたしを支えながら

車の後部座席に座らせてくれた。

「璃子も愛子さんも…ごめんね。

迷惑かけちゃって…」

痛みをこらえて謝る。

そんなわたしに

優しく笑う愛子さん。

「流羽ちゃんのためだもの。

なんてことないわよー!

気にしないの!」

「そうだよ?

今はとにかく自分のことだけ

考える!分かった?」

隣でわたしの手を握る璃子。

こうなることも

考えておかなきゃいけなかったのに…

やりたい気持ちが溢れて

足のことまで考えが及ばなかった…

情けないよ…

わたしは痛みをこらえながら

窓にうつる自分を恨めしく

見つめた。

学校には足のことは

知らせているけど、

クラスのみんなや、

もちろん、桐生くんにも

風邪を引いたということに

してもらう事になっている。

いきなり部活を休むことに

なるなんて…

ほとほと情けないよ。

頑張れって言ってくれた

桐生くんの優しい笑顔を

思い出した。

今頃、桐生くんは

もう、お家に着いてるかな?

明日から、少しの間見れない

桐生くんのことを考えながら、

窓から夜空を見上げ、

大きく溜め息をついた…

そして、3日間

わたしは学校を休んだ。
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