君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
お昼休みが終わって

今から午後の部が

始まろうとしている。

わたしは競技日程表に

指を滑らせた。

午後の部、最初の競技は…

クラス対抗リレーかぁ。

うちのクラスからは、女の子が

陸部の田中さんと成川さん、

璃子だったよね。

男の子は…

サッカー部の芦屋くんと

バスケ部の嶋崎くんと桐生くん。

今はごちゃごちゃ考えないで

応援頑張らないとね!

午前中はベットの中で

しかも寝ちゃってたし…

1人100メートルって

結構長くないのかな?

わたしなら数十メートルで

バタンキューだよ…

実行委員の合図で第1走者が

スタートラインに立った。

1番は田中さんか…

わたしはぴょんぴょん跳ねながら

大きな声援を送る。

「田中さーん!!頑張れー!!」

他のクラスの人からの失笑も

今のわたしは聞き流し、

声援を送り続けた。

そして、みんなも

どこから持ってきたのか、

カラフルなポンポンを振り回して

応援し始める。

「田中ーー!

陸部の力見せつけてやれ!」

「1ーB、頑張れーー!!」

スタートラインに立つ田中さんは

わたし達に向かって親指を立てた。

スタートの合図と同時に

田中さんが一気に駆け抜けていく。

すごい!!

めちゃくちゃ早い!!

2位との差はぐんぐん広がり、

第2走者の成川さんにバトンが

渡されると、更にスピードが上がり、

うちのクラスが断トツの

1位をキープしている。

あっ!次璃子!!

「璃子ー!頑張れーー!!」

璃子は余裕があるのか、

ものすごい勢いで走りながら

わたし達にピースサイン…

さすがに競技中にピースは

駄目だよ…璃子。

そして次はいよいよ

男の子達の出番!

次、嶋崎くんだ!

「嶋崎くーん!頑張れーー!!」

「バスケ部の力見せつけてやれー!」

グッと親指を立てて

白い歯を見せる

嶋崎くんは璃子からの

バトンを受け取り、

猛スピードで走り抜けていく。

身体が大きいと

その分手足が長いから

一歩がかなり大きい!

そしてあっという間に芦屋くんへ

バトンが渡る。

「芦屋くん!頑張ってー!」

さすがサッカー部のエースだ!

小柄だけど、スピードが半端ないよ!

残り半分をきったところで

桐生くんがスタートラインに立った。

そして…

芦屋くんからバトンを受け取った瞬間!

ドクンッ!!

ほんの一瞬だけど…

背中が光って見えた。

光を纏っているような錯覚に

わたしは目をこする。

そして、コーナーを曲がる瞬間…

目が合った。

っ!!!

「桐生ー!そのままぶち抜けーー!」

わたしは目が合ったことに

ドキドキして応援するのを

完全に忘れてしまった。

気づいた時にはもう、

桐生くんはゴールテープを

切った後だった。

立ち尽くすわたしは

リレーメンバーと

ハイタッチをする

桐生くんを呆然と見つめていた。

そのとき、振り返って

微笑んだ桐生くんと

目が合った、わたしは

周りの騒がしい音も

マイクで何か言っている

体育祭実行委員の声さえも

聞こえないほどに、

自分の心臓がドクドクと

鳴るのを感じながら、

ジッと桐生くんだけを

見つめていた。

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