記憶を失くした少女【完】
「なんか、分かんないけど覚えてた………」
歌い終わって、ソファーに座っている今でも放心状態……。
取りあえず、ジュースを飲んで落ち着かせた。
「じゃあ、次俺歌うわ」
隣にいる遥輝がそう言うと、私が手に持っていたマイクをスッと取った。
「遥輝が歌うの珍しいな!」
「いつぶりだっけ?」
「3ヶ月ぶりじゃね?」
「まぁ、頻繁に行ってる俺ら基準だと珍しいよな」
………どうやら、遥輝が歌うのは珍しいことらしい。
曲名は分かんないけど、リズムは好きだな。
低音ボイスが心地よい。
っていうか、歌の知らない私でも分かるぐらい上手いというね…………。
「フゥ~~ッ!!!遥輝いいぞー!!!」
「イェーイ!!!」
周りも声を張り上げ盛り上げる。
気づけば歌は最後の章にさしかかっていて、歌い終わるとメロディーだけが切なく部屋に響いていた。
「遥輝って上手いんだね」
「あ?別に普通だ」
「みんな言ってたけど、なんであんまり歌わないの?」
勿体無いよね。
音痴が歌を歌いたくないのならまだしも、歌上手いのに歌を歌いたくないとか……。
「歌うのは何ともねぇけど、ただ今歌いたい気分だったから歌っただけだ」
「何それ(笑)」
つまり、いつも歌いたい気分じゃないから歌わないってこと?
でも、それだったらなんでカラオケに来るんだろう?
お金かかるのに………………。