記憶を失くした少女【完】



「なんか、分かんないけど覚えてた………」


歌い終わって、ソファーに座っている今でも放心状態……。

取りあえず、ジュースを飲んで落ち着かせた。


「じゃあ、次俺歌うわ」


隣にいる遥輝がそう言うと、私が手に持っていたマイクをスッと取った。


「遥輝が歌うの珍しいな!」

「いつぶりだっけ?」


「3ヶ月ぶりじゃね?」

「まぁ、頻繁に行ってる俺ら基準だと珍しいよな」


………どうやら、遥輝が歌うのは珍しいことらしい。


曲名は分かんないけど、リズムは好きだな。

低音ボイスが心地よい。


っていうか、歌の知らない私でも分かるぐらい上手いというね…………。

「フゥ~~ッ!!!遥輝いいぞー!!!」

「イェーイ!!!」

周りも声を張り上げ盛り上げる。


気づけば歌は最後の章にさしかかっていて、歌い終わるとメロディーだけが切なく部屋に響いていた。


「遥輝って上手いんだね」

「あ?別に普通だ」

「みんな言ってたけど、なんであんまり歌わないの?」

勿体無いよね。

音痴が歌を歌いたくないのならまだしも、歌上手いのに歌を歌いたくないとか……。


「歌うのは何ともねぇけど、ただ今歌いたい気分だったから歌っただけだ」

「何それ(笑)」

つまり、いつも歌いたい気分じゃないから歌わないってこと?


でも、それだったらなんでカラオケに来るんだろう?


お金かかるのに………………。


< 110 / 245 >

この作品をシェア

pagetop