記憶を失くした少女【完】
「ほら」
そう言ってマイクを手渡された。
「いや、本当に音程とか分かんないって……」
「大丈夫だろ。適当にみんな盛り上げてくれるから安心しろ」
取りあえずマイクを受け取った私は立ち上がってテレビ画面の方を見た。
画面に『Destamce』が表示されると同時に綺麗なメロディーが流れる。
最初まではメロディーとか音程とか分かんないから絶対無理だと思ってたんだけど……………、
なんか、これ知ってる。
不思議と歌えるようなそんな気分になった。
「なぜなのぉ~♪何してもぉ~♪」
出だしも完璧。音程も分かんないはずなのに、メロディーにノッてる。
「うわ……っ、上手いじゃん!!」
「へぇ、意外」
私の歌声に周りは唖然………………………。もちろん歌ってる私の方が混乱している。
だって、分かるから。
こうやって歌ってみると、なぜか懐かしく思うのは何でだろう。
無事に歌い終わると拍手をもらった。
「お前歌すげぇーな!歌手なれるんじゃね!?(笑)」
「まぁ、良かったんじゃない?僕の次ぐらいに」
「お前、歌えんじゃん」
なんとか歌いきることが出来た……………………。