記憶を失くした少女【完】



「ほら、俺掴んどくから」

男子生徒1人が私の両腕を掴む。


「やめて!!」


身動きが取れなくなった。


「サンキュ~!どれどれ…………」


男の手が私のブレザーの中の制服の内ポケットに入ってくる。

どうすることもできなかった私は、あっさりと学生証の入ったケースを取られてしまった。



「山田綺羅?これって、山田の学生証じゃん!何でこんなの持ってるの?」

不思議そうに聞いてくる。

やはり、それが今の私だとは思っていないみたい。


「まさか友達だったとか?アイツやめたほうがいいよ~!いい噂聞かねぇし(笑)」

「そうそう!どうせ断れずに絡まれてるんだろ?嫌だったら嫌って言わねぇと(笑)あ、どうせなら俺達が痛めつけてあげようか?(笑)」


「いいねぇ~!こんな後輩までもが困ってんだし、やるか?(笑)」


それが私だとは知らずに話が進む。


上の学年からも知られていたこと、嫌な噂しかなかったこと、裏ではこうなってるんだと知ったこと。


噂を聞いて傷ついたけど、さらにこの学校では私の味方なんておらず、皆が私を嫌っているという現状を知ると、悲しくて、無意識に涙がこぼれた。


「え?なんで泣くの?」

周りの男子生徒たちはそんな私を見て驚いている。


私は涙を止めることが出来ない。

とにかく寂しくて悲しい。


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