イケメン医師は今日も新妻が可愛くて仕方ない

「千花さん、優しそうな人だな」

そう、仕事に戻って行ったドアを見ながら言う。

「かなりの良い人だよ、千花姉さん!真穂が謝った時も驚いてたけど許してくれて。伊吹兄さんとの関係において、いい機会だったって言ってくれて」

そう結実が言えば、真穂が続けて言った。

「ホントに優しくてしっかりした人。だから伊吹兄さんは、ずっと千花さんが好きなんだわ。私が我儘言ってふたりを困らせたのに、千花さんを千花姉さんって呼んでもいいよって、言ってくれるんだよ。勝てるわけがないよね」

そう肩を竦めて、苦笑する真穂。

「あの、伊吹兄さんが惚れて結婚までした相手だしな。どんだけじいさんばあさんが良家の娘との話を持ってきても頷かなかったのは千花さんが居たから……だしね」


クスッと笑いながら俺が言えば、結実があっさりと言う。

「まぁ、そうでしょうね。だってあの二人の関係は、伊吹兄さんが惚れに惚れてるって感じだもの。なのに仕事だであんな事したら。あんなにいい人でも、逃げられるよ」

フンっと鼻息荒い結実に、俺は見たままに感じたことを話す。

「でも、あの穏やかな感じの千花さん見ると、なんとか伊吹兄さんと仲直りしてくれたんじゃないか?」

そう言えば、千花さんが出て行ったドアを眺めつつ真穂が言う。

「惚れに惚れてる相手に逃げられたら、伊吹兄さんは撃沈よ。それが分かってて逃すような真似はしないし、今後は大丈夫じゃないかしらね」

惚れてた相手のはずなのに、真穂は結構冷静だ。
< 42 / 64 >

この作品をシェア

pagetop