イケメン医師は今日も新妻が可愛くて仕方ない
そうして控え室で待機していると、両親がやってきた。

「ま、すっかり綺麗になったわね」
「さすが、伊吹くんだな」

ドレス姿娘に父と母は言うと、その後は数枚の写真を撮ると満足げにして、部屋をあとにした。

「じゃあ、先に行ってるわね」

そう言って、母がベールダウンをして控え室を出ていく。

それから少ししてドアのノックの後、案内役のスタッフに声をかけられた。

「お時間になりますので、ご移動をお願いします」

そうしてチャペルの前に行くと父が居て、静かに腕を組んだ。

「入籍したのは分かってたが、これでホントに嫁にいったんだなと思えるな。しっかりやりなさい」

思わず涙腺が緩むと、くすくす笑って父が言う。

「せっかく綺麗にしたんだ、泣くなよ」

そう腕に乗せた私の手を叩いて言う。

「うん……。ありがとう、お父さん」

そうして開けられたドアの先には、ステンドグラスに彩られた祭壇の前にグレーのタキシードをかっこよく着こなした伊吹が立っている。

その表情は甘くて、柔らかく穏やか。

ゆっくりとでも確実に一歩ずつ、そんな伊吹に向かって歩いていく。

そうして辿り着いた、伊吹の前。

「伊吹くん、千花を頼んだよ」

「はい、義父さん。一緒に幸せになります」

その伊吹からの言葉にうなずいて、席に行く父の背中を見送る。

そして目の前の伊吹を見つめる。

「これからだよ」

その小さなつぶやきにコクっとうなずいて、牧師さんの言葉を聞いた。
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