本日、結婚いたしましたが、偽装です。
午後の仕事の間と、それから残業中の今は、気付けばその事ばかり考えていた。
意図や目的が分からないなら、課長に直接聞くしかないよね……。
見えない謎に悶々としていても、それが仕事に支障をきたすのも困るし、なによりも私が気になって仕方がなかったので、そう結論を出した。
今は、他の鬼頭課長のファンだと言う女子社員に変な誤解をされる心配は無い。
課長と二人っきりの今が、訊くチャンスだ。
この謎を一日でも早く解明したい私は、一度深呼吸をしてから、口を開いた。
「……あの、課長……」
おずおずと、頼りない声で言うと、課長が顔を上げて、鋭い眼差しで私を見つめた。
「なんだ」
相変わらず素っ気ない声。
「あの、少しお聞きしたいことがあるのですが、いいですか?」
「なんだ、在庫のことか?」
「あっ、いえ、それとは違う事なんですけど……」
「じゃあ、なんだ?」
「あの、仕事のことではなく、課長のことについて……、なんですけど……っ」
しばらく、間があった。
様子を窺うように、課長の方をそっと見ると、課長は今までずっとキーを叩いていた手を止めて、驚いたように少し目を見開きながら真っ直ぐと私を見ていた。
「……俺のこと?」
そして、深く眉根を寄せ、怪訝そうな表情を浮かべた。