忘れた頃に、それは痛みはじめる。
恋模様

桜貝

目を閉じると 波の音が聞こえてくる
砂が 私の髪に触れたら
桜貝が ポケットの中で音を立てた。


泣き出しそうな曇り空は
私の肩に 淋しい風を吹かせる。
そんな冷たさに 
私は 海辺にうずくまった。


去年のこの海は
ずっとキレイに晴れていて
白い波打ち際で
君の横顔が 揺れていたっけ。
砂に 二人の名前書いて 笑って。
でもすぐに 波にさらわれて 消えてったっけ。


あの海が どこまでも続いているなら
空と交差する その場所で
もう一度 君と逢えたら……


君のくれた桜貝を そっと海に捨てて
二人の海に 背を向けた。

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