甘い魔法にかけられて
事務所の誰にも気付かれてないことを
いとも簡単に口にしたKY

そのせいで事務所の人達、社長までもが
「上村さん伊達メガネだったのか、なんで?」

興味深々にざわつく

一瞬で視線を集めたことに
心臓が動悸を打ち始め全身の血液が
顔に集中したかと思う程熱くなった

「ほらほら上村さん困ってるでしょ、ファッションよね?気にしない気にしない」

助け舟を出してくれたのは
いつもはおとなしい三上さん

社長の弟さんの奥さんで
コミュ障の一番の理解者

三上さんの一言で
それぞれが通常業務に戻った

時折KYは立ち上がって
「上村さ~ん」と質問を投げてくる

その度更に俯いて答え
未だ顔も見ることにならず

遠くの席では
社長が
「上村さんが矢野さんの助手って感じで良いんじゃないか」
などと寝ぼけたことを言い出す始末

フゥとひと息ついて
大量の売り上げ入力に集中するも

KYが何か攻撃してこないか
気が散って仕方がないせいで

いつもよりコーヒーをお代わりし
いつもよりトイレに行くハメに

・・・最悪だ

更に運の悪いことに

ネット予約に詳しいだろうと
歓迎会の店選びまで任されて

穏やかな毎日が消えた
< 14 / 90 >

この作品をシェア

pagetop