甘い魔法にかけられて
まとわりつくKY
「「「カンパ〜イ」」」

グラスの心地よい音が響くと
みんなそれぞれグッと飲み干し
誰からともなく拍手が起こる

「柚ちゃんまたオレンジジュース?」

三上さんと小宮さんを正面に
安定の末席で小さく頷く

「そろそろ飲む練習もしなきゃ〜」

「はい、そのうちに」

飲み会の度に同じやり取りを繰り返す
2人の突っ込みに慣れてきたこの頃は

ひと口飲んでみようかなどと
気分も大きくなったりもする

しかし…
短大の卒業パーティで
たったコップ1杯のビールに
意識を飛ばされた経験が邪魔をして

実行することにはならない

少し離れた社長周りでは
ハイピッチで注文が繰り返され

ジョッキのビールが
次から次へと運ばれる

「柚ちゃん、矢野さんには慣れた?」

口元を隠した三上さんが囁くと
小宮さんも興味津々で身を乗り出す

『いえ、実はまだ顔も見たことないんです』

消え入りそうな声に

「「えーーーっ」」

ハモったのかと驚く程の
2人の声

慌ててシーーっと人差し指を口元に当てると

「あ〜、そうだったごめんね」

新種発見のような面白い表情を作る二人

なるべく周りと顔と箸を突き合わせる
必要が無い料理をチョイスし

俯き加減のまま
黙々と食べていると

ビール瓶を片手に
「よろしくお願いします」
と挨拶しながら近づくKYが視界に入った
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