甘い魔法にかけられて
長居するのも不自然だからと
ボールペンを1つ持って

レジへの列へ並んだ

ペンの類いも思わず写真を撮りそうになる程
性質、色、太さ・・・
綺麗に分類されて
全く混ざっていない

久々にワクワクする自分は
閉店後に写真に残そうと
口元を緩めた


そして・・・
いつもより早く回った順番

ペンを置いて財布を出した目の前に居たのは
母ではなく

デニム地のエプロンを着けた
大学生くらいの女の子だった

「‥100円です」

「っ、はい」

実家の店にアルバイトが居ることに
驚きすぎて少し狼狽える

全然こちらを見ようとしない様子に
斜め上から観察する余裕が生まれた

半袖のシャツから伸びる腕は真っ白で
今が初夏であることを疑う

肩より少し長い髪は
今時珍しいストレートの黒髪

少し長めの前髪と頰にかかるサイドの髪が邪魔をしているけれど
クリッとした可愛い目と長い睫毛
ほんのり桜色の唇

・・・可愛い

観察ではなく
完璧に見とれていた

「あの・・・100円です」

「あ、す、すみませんっ」

慌てて100円玉を取り出すと
彼女の手にそっと渡した

「ちょうどお預かりしますね」

簡単なレジをピッピと押して
出てきたレシートを“はい”と差し出した彼女は
やはり俯いたままで視線を合わせてくれることはなかった

「ありがとう」
大げさに受け取ると
名残惜しく店を後にした


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