甘い魔法にかけられて
壮大なる捕獲計画

side 航平

小さな文房具屋を営む実家に帰省する時は
必ず店に入って陳列を眺めることにしている

両親も敢えて何も声を掛けないから
一お客としての応対

いつものように店に入ると

・・・ん?

いつもと違う違和感に気づいた

大して広くない店は
夕方になると

学校帰りの学生が多い

これまでなら
値段を聞かれたり
場所を聞かれたり

店番をすると
無性に喉が渇いて仕方ない

それなのに

目当ての物を手にすると
レジに持って行く・・・

そんな当たり前の光景を目の当たりにする

・・・っと

人間観察している訳じゃなかった

違和感を確かめるために
陳列の前に進むと

その原因が広がっていた

・・・凄い

陳列棚に分類分けされた文房具達
更に統一されたプライスカード

それは人工的な物ではなくて
手書きで丁寧に書かれている

しかも
おススメ商品は少し大きなカードに
ひと言ポイントが加えられ
赤い装飾が付いてとても見やすい

平台に置かれた
パック販売のお買い得ノートには
飛び出す仕掛けのPOPが付いて
お得満載に見える

・・・問屋さんかな?

雑然としていた店の
魔法にかかったような変貌ぶりに

ただただ驚いていた




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