幸せのカタチ〜Fleeting memories〜
昇太と奥野さんの関係が終わった当時、俺は昇太から奥野さんと別れたってことだけはすぐに聞いていたが、どんな別れ方をしたのか詳しくは聞いていなかった。


でも別れの原因が俺にあることはわかっていた。


ただ心優しい昇太が俺のことを悪く言うことは絶対にないと思っていた。
なぜなら別れを決意していた時の昇太は最後まで自分を責め続けていたからだ。

恐らく別れの時に昇太は奥野さんに
「ごめん。別れよう」
とストレートに言っていたに違いない。

会話ベタな昇太が長ったらしく別れの話をする姿が俺には想像できなかった。

しかし奥野さんのことは正直俺にはよくわからない。


もしかしたら昇太に言い寄って、本心を聞き出していたのかもしれない。
それでも昇太は言わなかったと思うが…

昇太が言ってないにしろ、もしかしたら奥野さんは俺の存在に勘付いていたのかもしれない。
名前はチラホラ出ていたと言っていた。
そこから昇太の性格を加味すれば辿り着けない答えでもない。

『でも昇太に直接聞くのはやっぱり違うな』

俺はできれば当時のことを昇太に思い出させたくなかった。

当時を思い出せば俺の存在が邪魔だったとか、俺が親しくなりすぎたから悪かったんだとか、どう考えても悪い方向ばかりに向いてしまっていた。

まぁ今思えば自分が嫌われるってことにビビってただけなのかもしれない。

そんな考えが俺の頭の中をグルグル駆け巡っていると昇太はニヤリとした顔で俺に向かってこう言った。

「何何ー?もしかしてちょーっと気になってきたりしてるー?あの人のこと。」

俺は考え過ぎてよくわからなくなってきていた。

「気になるっていうのかなー。よくわかんねーけど、とりあえずいいわ!」

笑いながら俺はその場を流した。

昇太も「あっそ!」と少しつまらなさそうに言い、「てかさー…」と話題を変えてきたので、俺もその話題に切り替えた。

『なんか色々考えすぎてめんどくさくなってきたわ。でも何かなーこの胸の引っ掛かり…』

俺はこの時の胸の引っ掛かりを当時は何かわからなかったが、今になって思うと奥野さんが再会して俺の存在に気付いていながらも俺に話しかけてこなかったのは俺と昇太の関係性が深く、俺の背後に昇太の影がチラついていたように見えたのかもしれない。

ただ真相は今になってもわからないままだが…
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