土方歳三の熱情
「何をしたら士道に背く行為になるのかっていう例とか目安とかは示されてないんですか」

「そういうのはない」

「じゃあ、その決まり守りようがないじゃないですか」

「だからさ……なんというか……
士道に背く行為だと言われたら
腹を切らなきゃいけないってことなんだ」

「言われたらってそんな曖昧な話、誰が決めるんですか?」

「そりゃ土方さんだよ」

「そんなバカな。
それじゃあ土方さんに言いがかりをつけられたら無条件で切腹しなきゃいけないってことになっちゃうじゃないですか」

「だから、そうなんだよ」

「……」

「士道に背く行為だから腹を切れって言う権限があるのは土方さんと近藤さんだけで、
実際にその権限を行使するのは土方さんだけだから、
つまり土方さんにニラまれたら遅かれ早かれ腹を切らされることになるんだ。
まぁ極端な言い方をすると土方さんに死ねって言われたら死ななきゃいけないのが新撰組の決まりってことになるね」

「……」

「ね、大事な話でしょ」

なんともムチャクチャな決まりがあったものだ。

そりゃ土方さんが隊士達から怖れられるのも当然だ。

なにしろ土方さんは新撰組の隊士全員の命を奪う権限を持っているのだから。
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