土方歳三の熱情
土方さんが大声を出したものだから
何人かの隊士達が遠巻きにこちらの様子をうかがっている。

「いろんな人がいるんですねぇ、新撰組には」

私の口からは思わず率直な感想がこぼれ出てしまう。

「あぁ、誰でも入隊できるからな」

「役に立つんですか? あの人」

「大きいから弾除けがわりにはなるだろう」

土方さんと顔を見合わせて笑う。

今日の土方さんもちゃんと目が笑っている。

「穏便に事を処理していただいたようで、
ありがとうございます」

私は今になってお礼を言う。

「あぁ、しかしオレも常におまえの近くにいるわけじゃない」

「はぁ……」

「なぁ篠田、おまえ今夜からオレの家に通え。
そうすれば今みたいなことはなくなるはずだ」

「……」

「急な話だったか」

「えぇ……」

「まぁ即答しろとは言わん。
夜までまだ時間があるから、ゆっくり考えろ」

それだけ言うと土方さんは何事もなかったかのように立ち去ってしまう。
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