土方歳三の熱情
「平の隊士はあそこの大部屋で雑魚寝なんだが、
おまえは諸士取調役兼監察方見習いってことだから個室が使える。
風呂はみなと同じで共同の大風呂しかないけどな」

「私は家が近いので、家から通おうかと思っているのですが……」

「いや、それは許されねぇ。
新撰組は屯所で共同生活することで結束を固める決まりなんだ。
幹部になれば屯所の近くに家を構えることも許されるが、
最初から家から通うのは駄目だ」

「分かりました」

こたえながら私は、
弟の身代わりを深く考えもせずに引き受けてしまった自分を悔いた。

雑魚寝の大部屋の方をあてがわれていたら、
その日のうちに女だとバレてしまっていたに違いない。


剣の腕は立つけれど人見知りで気の小さい伊之助に新撰組の隊士など勤まるわけがない、
かといって新撰組からの要請を断ってしまうと道場がどんな嫌がらせを受けるか分かったものではない
と苦悩する父の姿が見ていられなくて自分から

「私がかわりに行く」

と言い出してしまった。
< 6 / 72 >

この作品をシェア

pagetop