その手が離せなくて
息が止まった。

ううん――・・・・・・息の仕方を忘れた。


まるで刃物の様に突き付けられる視線に、体が石の様に固まる。

脳裏に一瞬彼の姿が浮かんだけど、幻の様に消えた。


目の前には、まるで醜いモノを見つめる様に憎悪を丸出しにして私を睨み付ける女性。

そして、何も言わない私に、もう一度右手を振り上げて頬を叩いた。


先程より大きな炸裂音が路地に響く。

痛さは感じなかった。

もう、頭の中がパニックを起こしていて、痛さを感じなくさせていた。


掴んでいた胸倉を離されて、叩かれた勢いのままズサッと地面に倒れ込む。

体が異常な程に冷たくて、ガタガタと震えた。


「何とか言いなさいよ」

「――」

「聞きたい事は山ほどあるのよ」


どこか冷静に、冷たく放たれた言葉。

視線をゆっくりと上げると、彼女が再び右手を上げた所だった。


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