その手が離せなくて
「あ、望月さん、いた!」


満腹になったお腹を押さえて小さく息を吐いた時、後ろから突然声が聞こえて振り返った。

するとそこには、何かの資料を片手に持った俊君がこちらに駆けてきていた。


「走ったら転ぶよ? 俊君」

「も~その子供扱いするの止めてくださいよ!」

「ふふっ、まだ未成年なんだから子供と一緒だよ」

「あと、俊君ってなんだか子供みたいじゃないですか。『上谷内』か、『俊』って呼んでくださいよ」

「今更変えるのも面倒臭いじゃない」


拗ねた様な顔をする俊君にクスクスと笑う。

相変わらず小動物のようにチョロチョロしているから、なんだか可愛い。

うちの事務所の中で今年の唯一の新入社員という事もあってか、とても可愛がられている。


顔立ちはまだどこかあどけないけれど、それでも野球部だった事もあってか体つきは立派な男の人。

肩幅も十分あって、身長も私より大きい。

みんな揃って子供扱いしているけど、飲み込みは早いし、応用も効いて、将来有望とされている。

まぁ、調子にのるから本人には言ってやらないんだけどね。
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