呆れるくらいに君が恋しい。

「せーんぱいっ!今日も中庭にする?」
最近は水嶋くんと、
お昼御飯を一緒に食べてる。
佐和田と美紀のお昼を邪魔しちゃいけないと、
そう思って一人で食べるとこを探してたとき
水嶋くんに誘われて
それからずっと一緒。
いつものように
「せーんぱいっ!」と話しかけてくる、
水嶋くんの態度に救われている。
今日も一緒に中庭に向かう途中、
曲がり角を曲がろうとした水嶋くんは、
焦ったように私を見て
「今日は違うとこにしません?」
と、困ったように笑った。
「何かあるの?」
純粋に疑問に思って
水嶋くんの制止も聞かず、
曲がり角を覗きこんだ。
後ろ姿の美紀。
声をかけようとして、気づく。
美紀にキスをしている佐和田。
目が、合って、
照れたように笑う佐和田に
何かあった?って言う風に
振り返る美紀。
「あ、」
私に気づいた二人は
頬を染めて、話しかけてくる。
「めっちゃ恥ずいやん。」
「もう、彩っ。
居るなら言ってよ笑」
私も笑おうとして
「こんなとこでキスなんかしてる方が悪い笑」
って軽口叩いて
なのに、どうして。
「あ、や?泣いてる?どうした?」
「夏木?」
心配した二人の顔が涙でボヤけて見えない。
ああ、どうしよう。
何て言い訳しよう。
そう思ってても声すら出なくて。
無意識に水嶋くんを振り返った。
そしたら、
目の前が暗くなって。
水嶋くんの香りが強くなって。
水嶋くんの上着を、
頭から被せられたんだって気づく。
そのまま、後ろから抱き締められて。
「イチャイチャしてるとこ、邪魔してすみません。
夏木先輩、ちょっと具合悪くてー。」
耳元でそんな声が聞こえる。
「大丈夫なの?彩」
美紀の声。
「俺が保健室連れてくんで。」
水嶋くんの声。
「私も着いてくよ。」
美紀が近づく音が聞こえて
無意識に水嶋くんの服を引っ張った。
美紀にこの顔は見られたくない。
そんな心の声が聞こえたのか
水嶋くんは私を担ぎ上げて。
「大丈夫ですよ。俺が連れてくんで。」
そのまま歩き出す。
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