呆れるくらいに君が恋しい。
中庭から離れたであろうとこまで歩いた時
「おろして。」
と声をかける。
でも、そのまま水嶋くんは
私の声を無視して歩くから
服の間から顔を出す。
予想以上に近かった水嶋くんの顔に驚いて
もう一度服のなかに顔を埋めた。
「おろ、して。」
少し顔を出して、声をかけると
「だめ。」
って言われる。
「なんで。」
そう聞くと、
「甘やかすって言った。」
そう返されて。
いつの間にかプールの金網の前に着いてた。
「ここで、初めて先輩を見た。」
そう言って私を見つめる君。
「先輩は、カッコ良くて、綺麗で、
でもどこか儚くて
触ったら壊れてしまいそうに脆く感じて
声をかけることしかできなかった。」
プールへの階段を上って上を見上げる。
「先輩を見てて、
好きな人に好きな人がいても
笑ってられるなんて強いなって思って
でも、強がってるだけだって後から気づいて
俺が甘やかしてあげたいって思った。」
アスファルトに座って
プールの中に足を入れる君。
ポチャッて音がして、私も座って足を入れる。
「先輩が、まだ
佐和田先輩のことを、好きでも、いい。」
初めて見る、
何を考えてるのか分からない彼の横顔。
「でも、きっと俺のこと好きにさせて見せるから。」
そう言って君は、プールの水面に映る私に
顔を近づけてキスをする。
そのまま、横目で私を見上げて
「俺と付き合って。」
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