強引ドクターの蜜恋処方箋
『チナツ、元気にしていますか?
お母さんはすこぶる元気です。こないだは、先生と海に入っちゃった。びっくりでしょう?近くまでイルカが来て本当に楽しかったわ。チナツも雄馬くんといつかこちらに遊びにいらっしゃい』

海に入ったのね。

すごいわ。

オーストラリアにはまだ行ったことがなかった。

いつか、雄馬さんと一緒になったら、必ず行きたい場所。

カードにはウミガメとイルカが海で戯れているイラストが描かれていた。

そのカードの一番隅っこに後で付け加えられたかのような母のメッセージを見つける。

『それから・・・何事も慌てちゃだめよ。必ずうまくいくから』

母は、今の私が見えてるんじゃないかしら。

思わずそのメッセージを見つめながら、胸の奥が熱くなった。

とにかく、今目の前にある現実だけをしっかり見つめよう。

立派な看護師になるために。

実習のためのテキストを広げたテーブルの前に座った。

そして、その1週間後、再び実習が始まった。

外科はオペが多いため、毎朝自分の決まった仕事をした後も落ち着く暇もなく忙しい。

時々、忙しすぎて失敗することもあり、先輩に叱られることも度々だったけどとても充実していた。

少しずつだけど前回の実習の時よりも成長してるのかな?

横でユウヒが机につっぷしていた。

「どうしたの?」

ユウヒに声をかける。

ユウヒは半分寝てしまいそうな目で私を見上げた。

「だってー、計画表、何回書き直してもオッケーとれないんですぅ。今日も一日計画表とにらめっこ。もう、仕事に入れてるチナツさんが羨ましい」

ユウヒの手元に半分隠れていた計画表に目をやると、びっしり赤で修正されていた。

この修正の量だったら、しばらくはかかりそうね。

だけど、私もこ前回の実習の時はそういう事もあったなと思い出した。

ユウヒの肩に手を置いて、その耳元に小さな声で言った。

「大丈夫大丈夫。まだ始まったばかりなんだから。外科の先輩達は厳しめだけど、皆すごくよくできる方ばかりだからこの外科病棟乗り切ったら相当私達鍛えられるわよ」

ユウヒは、両手で机の上をパン!と叩くと、気合を入れるかのように両袖をまくり上げた。

「そうですね!立派な看護師になるための試練です!がんばります!」

そんなユウヒが頼もしく映る。

再び、机上に向かいだしたユウヒに微笑んだ。

「南川さぁん!」

その時、先輩から呼ばれた。



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