強引ドクターの蜜恋処方箋
冷たい水で顔を洗った。

頬がピリピリする。

真っ白なふわふわのタオルで顔をそっと拭いた。

今日は、天気予報通りかなり冷え込んでいる。

リビングのカーテンを開けると、曇天の空が広がっていた。

その時、ベランダに白いものがちらちらと舞い込んできた。

雪?

初雪だった。

どうりで朝から冷え込むわけだ。

両手で、体を抱えながら暖房をつけた。

こういう日はホットココアに限る。

トーストを焼いて、とろけるチーズをのせた。

私の簡単な朝食だ。

雄馬さんがいる時は、できるだけご飯とお味噌汁を作るようにしてるんだけどね。

どんなに簡単な食事を作っても「おいしい」とがっついてくれる。

あれだけハイソな食事に慣れてるから相当舌は肥えてると思うんだけど、どこまでも優しい。

今朝は、昨晩買って来ておいたお総菜パンとコーヒーで朝食をとったらしい。

その残骸がキッチンの横に置かれていた。

疲れてるのにごめんね・・・。

その残骸を見ながら、そっと心の中でつぶやいた。

ココアを飲もうとした時、スマホが振るえた。

雄馬さんからのラインだ。

『出る前に言い忘れてた』

・・・??

『大好きだよ』

もー。

読みながら、つい笑ってしまう。

いつも朝、仕事に出る前に言ってくれる言葉だった。

こんなにも「大好き」って誰かにささやかれたことが今まであっただろうか。

雄馬さんに返信を打つ。

『私も大好き』

そして、誰かにこんなにも「大好き」って言ったこともなかった。

その言葉が魔法みたいに、自分のエネルギーを倍増する力になるってことも初めて知ったかもしれない。





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