紅の葬送曲


「殺して……凌はそれで良いの?」




すると、志摩がティーカップをソーサーに置いて、今にも泣きそうな顔で俺を見てきた。




……さっきの言葉を言った時、俺はどんな顔をしていたのだろう?




鬼のような、悪魔のような顔をしていたのだろうか?




じゃなかったら、志摩がそんな顔しない。





「ねぇ、凌。もう自由になって良いと思うよ。おば様が言ってたことも私達の体のことも凌が一人で抱えることじゃない。おじ様だって、凌に──」




「志摩、詩依」




詩依の言葉を遮るように、俺は彼女達の名前を呼んだ。




「俺は自分でこの生き方を選んだ。ただ俺は近くの人を守って、切碕の呪いを解いて、死んでも良い」




俺はその生き方で良い。




奴を殺して、俺が死んでも二人が生きてくれれば良い。




皆が平和な世に生きてくれれば良い。





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