紅の葬送曲
「まだ持っていたのか、その写真。中等部の時の文化祭の女装コンテストの時のだろ、それ」
寿永隊長は呆れたようにため息を吐くと、紅茶を口にする。
「そうそう!凌と汀君ってば女の子の格好似合いすぎて二人にしか得点入らなくてダブル優勝だったよね」
寿永隊長の弟さんって汀(ナギサ)って言うんだ……。
「……うるさい。俺と汀は不本意だ」
「ふて腐れるなって。元が良いんだから仕方ないんだよ」
ニヤニヤする小鳥遊君に対し、寿永隊長はクスリと嬉しそうに小さく笑った。
あ、寿永隊長がこんな風に笑った見たの初めてだ……。
不意に見れた彼の笑顔に、胸の音がうるさくなった。
「……父さんが生きてたら馬鹿みたいに喜ぶだろうな。娘欲しがってたみたいだから」
真面目そうだった寿永家の前当主が女装した息子達を見て喜ぶとか意外……。
「お陰で赤ん坊の頃は淡い女の子っぽい色ばっかりだったな。あ、それは操さんの趣味か」
小鳥遊君の口から出た≪操さん≫という名前に、寿永隊長の顔から笑顔が消えた。
その様子を見た小鳥遊君は「しまった……」と口を押さえる。