紅の葬送曲
「……昔からあの人は自分の主張を俺に押し付けてきてたからな。人の気も知らないで」
「凌、母親に対してあの人はな──」
「……息子に寿永の為に死ねっていう女を母親って呼べっていうのか?」
寿永隊長の言葉に、息を飲んだ。
私だけでなく、隣にいた京もスマホから顔を上げて驚いたような顔をしていた。
息子に寿永の為に死ねっていう母親……?
意味が分からない。
寿永隊長の身に起きていることを母親なら知っているはずなのに……、普通なら生きてほしいと願うはずなのに……。
ふと、寿永隊長と目が合った。
「あの、その……」
何か言わなきゃって思ったけど言葉が出ない。
そんな私に、彼は小さく笑った。
さっきの嬉しそうな笑みではなく、悲しそうな笑みだった。
「何故、お前が泣きそうになってる?」
「へ?」
私、泣きそうな顔してた?