紅の葬送曲
「……つまらない」
ふと、寿永隊長はそう呟くと転がっていたナイフを爪先で蹴り上げて左手でキャッチした。
「皆、そうだ。俺に殺意を向けてくるわりに殺せない。そんなに寿永が怖いか?」
ナイフを左手で弄びながら彼は男の人を見下ろしている。
「こ、怖いに決まってんだろ!?お前らは化け物だ!地位も名誉も財産も平民なんかと比べ物になりゃしねぇ!お前らに逆らえば破滅しかねぇんだよ!」
泣き叫ぶ男の人はもう自棄になっているようにも見える。
そんな彼の眼前に、寿永隊長は持っていたナイフを突き刺した。
「ひ……っ!?」
「……帰る。江、後は頼んだ」
「ちょっ……凌!?」
小鳥遊君が寿永隊長を呼び止めたけど、彼はレジにまっすぐ向かっていった。
「浅井ちゃん、凌と一緒に行って!香西ちゃんは俺とこいつを殺人未遂で現行犯逮捕、署に連行するから」
私は小鳥遊君に指示されるがまま、寿永隊長のいるレジに向かった。