紅の葬送曲
警察学校時代に護身術や逮捕するために必要な体術は訓練した。
でも、小鳥遊君のそれはその頃に見た訓練のレベルよりも何倍も高度で早業だった。
それを見たら実力を知っていても彼が何で翔鷹にいて、何で寿永隊長の傍にいられるのかが改めて分かった気がした。
「卑怯な奴め……ッ!自分は守って、娘は守ってくれなかったのか!?翔鷹の隊長だろ!?」
サラリーマンの男の人は小鳥遊君に押さえつけられながらも、寿永隊長に食って掛かろうとしている。
「なーに言ってんの、おじさん。凌は寿永家の跡取りでもあるんだよ?そんな奴が護衛もつけずに歩くと思ってんの?」
「まあ、つけなくても自分で守れるがな」
寿永隊長は優雅に紅茶を飲むと、ティーカップをソーサーに置いた。
そして、ゆっくり立ち上がると男の人を冷たい目で見下ろした。
その目に、男の人は自分がした過ちに顔を真っ青にした。
彼がナイフを向けたのは日本を統べる三名家の跡取りであり、日本が誇る最強の組織を束ねる最強の人だ。
──その意味が分からない人はこの日本にいないだろう。