紅の葬送曲


「痛い……?痛いならもっとやってあげる……」




そう言って笑った彼女は女の顔面を床に押しつけ、踏みつけた。




「浅井ちゃん!?」




「何してんだ、浅井さん!」




江と矢賀が動揺しながらも彼女に声をかける。




「何って……小鳥遊さんと同じ目に合わせるの」




人を痛め付けようとしているというのに、浅井の顔は恍惚としている。




こいつは本当に俺の知っている浅井か……?




これじゃあ、まるで──。




「待って!彼女をやったのは私じゃない!私はただ、明晴の命令で彼女に化けて此処に来ただけ!やったのは楊蘭よ!」




すると、床に顔を押しつけられながら女がそう叫んだ。



楊蘭……?




あの化粧が濃い香水の匂いのきついあの女か……。




今は菖をやったのが誰なのか置いておく。




ひとまず、浅井を止めなければ──。





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