紅の葬送曲


「浅井!止めろ!」




俺は浅井を羽交い締めにすると、女から引き離した。




「離して!私は強くならなくちゃいけないの!私が弱いから皆死ぬんだ!」




でも、浅井は俺の腕の中で暴れる。




誰かが死ぬのはお前のせいじゃない。





人はいずれ死ぬ。




それが人に奪われてなのか自ら絶つのか、人によって異なるが、人は死ぬんだ。




だから──。




「君は堕ちたらいけないよ、紅緒」




「!?」





突然聞こえた男の声に、空気が張りつめたものになる。




「何で此処に……」





その男の声は浅井にも聞こえていたらしく、呆気を取られたようにその男を見ている。





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