紅の葬送曲



「はっしゅ……っ」




初夏とはいえ、夕方は寒い。





翔鷹の傍の喫茶店に行ったという寿永隊長を迎えに翔鷹の門の所で待っていたら、自然とくしゃみが出た。






上着着てくれば良かった……。






日中が暖かかったという理由で脱いだ上着を執務室に置いてきてしまった。





お陰でかなり肌寒い。




「ひっくしょん……」




「親父臭いくしゃみだな」





ふと、寿永隊長の声が聞こえた。





と思ったら、聞き間違えだったらしく寿永隊長はそこにいなかった。





その代わりにいたのは彼によく似た男の子──汀様だった。





汀様は付き人もなく、一人で立っていて私をじっと見ている。






私を見つめる眼差しは前の嫌悪が込められたものと似ているけど、微かに戸惑いも感じられた。






「あの……何か……?」






躊躇いながらも問いかけると、汀様は両手をポケットに突っ込んだまま私から視線を逸らした。





え、対処に困るんだけど……。





もしかして、寿永隊長に用事でもあるのかな?






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