紅の葬送曲


「もしかして、寿永隊長にご用ですか?生憎寿永隊長は外出中で──」





「……兄さんに用事じゃありません。俺が用事あるのは貴女です」




視線を逸らしたまま、汀様はそう言った。





私に用事?





寿永さんを……彼の父親を殺した云々の話なら多分寿永隊長が話してると思うんだけど……。





私はまさかの返答に戸惑い、目が泳いでしまう。





「あの……俺……」




「汀?」




すると、今度こそ寿永隊長の声が聞こえて、彼自身の姿も現れた。





「寿永隊長!」





何とも言い難い空気が変わることに安堵し寿永隊長を見ると、彼は私の横を通りすぎて汀様に近付く。




そして、前触れもなく左手を持ち上げて、汀様の頬を叩いた。






えぇー!何で平手打ち!?





これまた突拍子もない上司の行動に、私は呆気を取られる。





「汀、こいつに何の用だ?あの人に言われてこいつをいびりに来たのか?」





「違う!」





「だったら何だ?こいつに言う前に俺に言ってみろ」




寿永隊長は寿永本邸での汀様の私に対する態度をまだ怒っているようだ。






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