紅の葬送曲
「紅緒、ご飯だよ」
僕はソファーに座ってぼうっとテレビを見つめる紅緒に声をかける。
でも、紅緒は「いらない」と首を横に振るだけだった。
「駄目だよ、食べないと。このままだと死ぬよ?」
凌君があんなことになってから数日が経ったというのに、紅緒はその現実を受け入れられないのか放心状態だった。
食事も摂らず、眠れてもいないようだ。
ただでさえ、痩せている妹が更に痩せてしまっていることに兄として見ていられない。
「良いよ……、別に死んでも……」
自分を軽んじる所がある紅緒だけど、今の状況でこんなことを言うなんて……。
僕はそんな妹の姿に腹が立ち、紅緒に平手打ちを食らわせる。
紅緒に手を上げたのは初めてかもしれない。
それでも僕は紅緒を叩かずにはいられなかった。