紅の葬送曲
「紅斗、摂紀お兄ちゃんと会ったことあるの?」
「僕なりに切碕のことを調べているうちに紅緒以外の兄弟の存在を知って、接触したんだ。もう4年くらい前の話だけどね」
じゃあ、紅斗は4年くらい前には摂紀お兄ちゃんの存在を知ってんだ。
……知らなかったのは私だけか。
少し寂しさを感じたけど、今は摂紀お兄ちゃんの言葉の方が気になる。
皆の視線を受けた摂紀お兄ちゃんは意地悪を思い付いた子供のような顔をした。
「さぁね、どうだろ?」
「真面目に答えないとお父さんに言うよ?玖下さんが紗也叔母さんを振ったって」
「はぁ!?止めてよ、シスコンな上に親馬鹿な依良にそんなこと言ったら僕が殺される!」
「なら、正直に言って」
詩依さんの圧力に、摂紀お兄ちゃんはたじたじだ。
……何か憐れだな。
摂紀お兄ちゃんは困ったように頬を掻く。
そして……。
「紗也の気持ちは分かってる。でも、僕は彼女を妹のようにしか思えない」
「玖下さん!?」
「……それに、僕が彼女の気持ちに答えても依良や詩依が辛い思いをしてるのに僕だけ幸せにはなれないよ」
摂紀お兄ちゃんはそう言って悲しそうに笑った。