紅の葬送曲




廃ビルの中に入ると、やっぱり廃ビルだけあって老朽化が進んでいた。





町外れにあった廃屋よりかはましだけど、薄暗く不気味だ。





「何か出そうだね……」





「そういうこと言うの止めてくれますか、佐滝さん」





私は前を楽しそうに歩く佐滝さんの背中を叩くと、隣を歩く小鳥遊君の服を掴む。





「ビビりなんだね、浅井ちゃんって。あんなに勇ましい子だから幽霊とかも平気そうなのに」





「苦手というか見えなければ信じないけど、いかにも見えなそうな所は苦手なの!」





霊感のない私。





でも、こういういかにも出そうな所は苦手だ。





増しては私の傍には──。






「大丈夫だよ、浅井さん。此処には生き霊はいないから」





幽霊の見える芦葉さんがいる。





待って、生き霊はいないってことは違う霊はいるの?






壊れたおもちゃのようにギギギ……と芦葉さんの方を振り返ると彼は小さく笑った。





「安倍明晴達に殺されて成仏出来ない霊ならいるよ、此処。悪霊になりそうなのもいるし」






「だから、そういうこと言うの止めてくれますか!?」






私は平然とそんなことを言う芦葉さんを睨んだ。





すると、一番前を歩いていた羽取さんがこっちを振り返る。





「お前ら、少しは緊張感を持て!此処は敵の根城なんだぞ!?遠足かなんかと勘違いしてねぇだろうな」





厳つい見た目とは裏腹に、羽取さんは酷く神経質で真面目な性格をしている。






だから、緊張感のない私達の様子に腹が立っているんだろう。








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