一途な小説家の初恋独占契約
エピローグ
梅雨明けのある日、東京の郊外に一軒の家が建った。

周囲は、武蔵野の面影を残す雑木林に囲まれた、閑静な地に立つ日本家屋だ。
庭も和風の設えで、桜や楓、金木犀や椿といった花木が植えられている。
手前の花壇は、まだ手つかず。
引っ越してからのお楽しみだ。

庭を愛で、風を楽しむ縁側では、日本ではかなり大柄の男性、ジョエル・早見・オリヴェイラが、小さな子を抱いている。
作家業に専念したがる彼は、新刊を出版したときくらいしか取材に応じないけれど、相変わらずその姿は、写真をパネルに入れて飾っておきたいくらい美しい。

「ジョー」

私が呼びかけると、ジョーは腕の中の赤ちゃんを起こさないように、そっと微笑んだ。

「汐璃」
「ジョーの本、買ってきちゃった」
「出版社から送られてきたのに」

ジョーの新刊とペンを私が差し出すと、ジョーは苦笑しながらも、私に赤ちゃんを渡し、代わりに本を開いた。




――ジョー・ラザフォード 著
――オリヴェイラ・汐璃 訳



扉には、著者が他では決してしない日本語のサインが記された。




――最愛の妻、汐璃へ。




やがて子どもたちの笑い声が満ちるようになったその家の本棚には、何冊もの二人の本が並び、それは延々と増え続けていった。





二人の恋と愛と同じく延々と……言葉は紡がれ、途切れることはなかった。






- 終 -
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