キングの餌食になりまして。
眼鏡をかけキリッとした支配人はいつも通りの支配人に戻る。
「明日、奏は日本をたちます」
「……は?」
「聞いていませんか」
そんなこと、ひとことも……。
「しばらく日本には帰ってこないでしょう」
――帰ってこない?
それじゃあ、やっぱり、あたしのことは日本を離れる前にオモチャで遊んで行こうくらいにしか考えてないんだ。
「でも、こんな話。実知留さんは興味ないですよね」
「……え……」
「私を選んでくれたんですから」
「…………」
「さっきのキス。ちゃんと気持ち込めてくれていて嬉しかったです」
あたしは、支配人のことが好きだ。
あんな男よりも。ううん、比べちゃ失礼だ。
これから一緒にいるなら絶対に支配人がいい。
良かった。
キングに流されて“一夜だけの関係”にならなくて……。
そう思うのに。
幸せは、目の前にあって。
離れゆく脅威には、もう関わるべきじゃないのに。
――どうして胸がざわついてるの……?