溺愛プリンス~秘密のフィアンセ~
今日も、長い一日を終え、片付けに入ろうとした。

「…美々」
「…はい?」

振り返ればシェフがいて、自分の方に来るようにと促したので、私はすぐさまそこへ。

「…今からデザートを一品お願いできるか?」
「…今からですか?」

「…どうしても、美々の作ったものが食べたいと、お客様からのご要望だ」

…私の作ったものを食べたいなんて、嬉しい言葉だ。

「…わかりました。お客様は何か食べたいとは、仰ってましたか?」

「…いや、美々に任せると言うことだ」
「…わかりました」

私は数種類のケーキを作ると、それを箱に収めた。

「…シェフ、出来上がりました。これはどちらに?ここから近いようなら、私が持って行きます」

私の言葉に、少し迷ったシェフだったが、少し待つよう言われ、どこかに電話をしに行くと、また帰ってきて、こう言った。

「…北条コンチェルンは知ってるね?」
「…ぁ、はい。とても大きな会社ですよね。入ったことはありませんが、名前と場所ならわかります」

帰り支度をすると、ケーキの入った箱を小さな籠に入れると、自転車で、慎重に北条コンチェルンに向かった。

行く道中、シェフの顔の広さに感心するばかりだった。
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